「課長、おはようございます。このところよい天気がつづいて気持ちがいいですね。もっとも、午後になると少しは暑くなるかもしれませんが」
あけはなたれた窓から流れこんでくる若葉の匂いを含んだ風を受けながら、私は上役の机の前に立った。
「ああ、おはよう。きょうの仕事はこれだけだ」
と課長は無表情な目で、遠くの青空で育ちはじめている入道雲を見つめたまま言った。そして、机の上にある何枚かのカードを、片手で私の方に押しやった。
*文庫本「ボッコちゃん」(昭和46年新潮社発行)収録の”生活維持省”より抜粋
この作品は、日本SFのパイオニアであり、ショートショートの大家、星新一さんの一編です。
本作品は、最近NHKで短編アニメ化され放映されました。
*ショートショート:400字詰め原稿用紙5枚~8枚程度で仕上げる小説。
彼の作品の特徴は
・固有名詞は殆ど登場しない。
・人名は単純で、
姓:エヌ氏、アール氏
名:三郎、アイ、アリサ
男、女、妻、夫、警官、弁護士、宇宙人
程度である。
・その時代に起きていることを直接表現しない。
・とにかくやさしくて読みやすい文章である。
等々
時代、世代を越えても違和感無く読めるように作られています。
人によっては、幼稚で、古めかしい表現と感じられるかも知れませんが、
実はしっかりと風刺もなされ、人々に対する警鐘も含まれているのです。
冒頭の”生活維持省”が、近未来のことなのか、遠い未来のことなのか、
それは、あなた次第です。
*全編を読みたい方は、遠慮なく申し出てください。
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注)これをいつ頃購入して読んだのかというようなことは聞かないように!
今日はこのあたりで、お・し・ま・い・
good-night