読書日記 ：きしもと

最近読んだ本を紹介します。コロナコロナのご時世で、テレビでワイドショーなど見てコメンテーターと称する芸人の戯言など聞いてる場合ではありません。先人の知恵と知識を武器に「正しく」恐れねばなりません。



とうわけで、まず石弘之著「感染症の世界史」。

この方が書いた「地球環境報告」という本が岩波新書から出ています。地球温暖化、酸性雨、砂漠化、森林伐採など当時まだあまり一般的でなかった環境問題について網羅的にまとめらた良書です。学生の頃、この本を読んでレポートを何枚か書く課題が出たので著者の名前を見てピンときました。

遠い昔、アフリカ大陸で人類の祖先が誕生したころから、実に様々な感染症に悩まされてきたその歴史が網羅的に説明されています。代表的な感染症、例えばペスト、結核、コレラ、マラリア、インフルエンザなど、その原因や対処法（薬）をはじめ、その時代時代のエピソードがわかりやすく丁寧にまとめらており、読みやすくかつとても勉強になります。今もインフルエンザでは毎年大勢の人が亡くなり、我々人類は結核もマラリアも撲滅できていません。

この本が出たのは2014年ですが、あとがき（結章）に、中国は歴史的にも様々な感染症の発症地になっており、近年急増する人口が何らかの感染症に侵され春節祭などで世界中に拡散する時が要注意と書かれており、まあなんと言いますか苦笑いするしかありません。わかっていたのになんでこんなことになっちゃったんでしょうか。


次は、福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」。

ここ100年の生物学の進歩を追った本です。ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の解明から急速に分子生物学という分野が発展してきた、その高揚感が、学界に身を置く当事者（著者のことですね）の視点で生々しく描かれています。詩的な文体と相まって、良い映画を見たような読後感が味わえます。

実はこの本が出た直後（2009年）に一度読んでいるのですが、内容をすっかり忘れており、この度再読しました。再読して驚いたのは「PCR検査」という言葉が出てきていることです。

最近のコロナ騒動で毎日のようにPCRという言葉を耳にしますが、これはポリメラーゼ連鎖反応（Polymerase Chain Reaction）の略称です。ニュースなどで殺人事件の犯人がDNA判定で特定できたなどといいますが、こういった場合DNAは10億ほど必要なのだそうです。PCRが発明される前は、特定の大腸菌で培養してコツコツと増やしていったりしたそうです。

それがPCRという手法の発明によって、あっという間に10億のDNAのコピーが取れるようになったのです。しかも長い長い遺伝情報の、特定の部分の複製を増幅できるというところがPCRのミソです。その仕組みがとても面白いので、ここに私が理解した範囲で書こうかと思いましたが、長くなるのでやめます。興味のある方は、一度調べてみてください。


最後に、小松左京著「復活の日」

小松左京といえば「日本沈没」ですが、この「復活の日」も大変面白いです。上記2冊と異なりフィクションですね。フィクションとはいえ、全くあり得ないとも言い切れない怖さがあります。

端的にいうと、未知のウイルスによって人類があっという間に（3か月くらい？）、ほぼ滅亡してしまうお話です。病気によって人が死ぬだけではなく、病気が社会を壊していく様が妙にリアルに描かれていて、まるでコロナに喘いでいる今の日本を見て書いたのではないかと思うほどです。ある国の首相(だったかな？)が「人は病気だけで死ぬのではない」というようなことを言うのですが、まさにコロナによって社会や経済が止まってしまうことが及ぼす負の影響に直面している現在を見ているかのようなセリフで、ドキッとしました。

南極大陸には感染が及ばず、日本の昭和基地をはじめ、各国の科学観測基地の人々が感染を免れます。そして… 以下ネタバレですので書けません。

いろいろ悲惨なことばかり起きますが、タイトルが「復活の日」なので安心してください。ちょっとハッピーエンドです。