僕は犬である。名前は陸。先祖はドイツだそうだが、僕は日本で産まれたらしく、このよう名になってしまった。聞くところによると、僕の主人が当時観ていた、テレビドラマに出てきた男の子の名前だとか。こんな安易に名付けられた僕は、本当に愛されているのかと時々疑いたくなる。だが今更、ジョンだとかジェイクだとか洒落た呼び方をされてもこっぱずかしいので、陸と呼ばれたら振り向くことにしている。
この家に来て、8年と6月になるが、僕の仕事は留守番である。朝から夕方までが基本となっている。だがしかし、ここひと月半ほどは少々時間が長い。しかも土曜もである。主人も仕事であるから仕方がない。そのおかげで僕も食事にありつけている訳である。働いてもらわねば困る。
そんなある土曜の朝、いつもの風を装った主人が出掛けようとしている。僕は良い子を演じ所定のハウスとやらに、いつものように入ってやった。抵抗することも考えたが今日は止めることにした。だがやはり、玄関で靴を履く音が聞こえた際にひと言言ってやった。今日は仕事じゃないだろ!どこに行くんだ!
僕には主人が仕事なのか遊びなのかが分かるのだ。服装から判断するに、夕方まで戻ってこない。僕は行動に出た。ハウスとやらを脱走したのだ。いつもは良い子らしく所定の場所で過ごすのだが、実は脱走の方法を知っていたのだ。まずは植物の鉢にシャッ、次に冷蔵庫にシャッ、そして残り全部を床に出し切ってやった。主人の驚き嘆く顔が目に浮かぶ。
陸ただいま~。土曜の休日を満喫した私は、ご機嫌で鍵を開けた。
「ワンっ、ワンワンワン」ん?めっッちゃ近い。「ワンっ」嫌な予感・・・
う~わ最悪ーーー最悪最悪最悪。
「こら陸ーーー」してやったり顔の愛犬。
でも暫くすると、ニコニコ尻尾を振りながら甘えてきた。
あ~、もう。結局あっさり許してしまう。
いろ~んな物を壊され、何度も買い替えた。ゴミを散らかしては大掃除。あれこれ悪さもたくさんする。でも結局またすぐに許してしまう。
こんな感じで毎日振り回され、操られている私です。
くう~ん。
お菓子をもらうのは簡単なことである。